こんにちは しまです。
2022年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が
流行して2年目になります。
嫌なこと、不自由なことばかりと思っていましたが、
最近、
「コロナの産物?」
とも思えることが起こりました。
それは私が勤める
日本語学校の卒業生が
1浪して大学に合格できたことです。
~~浪人~~
日本人なら大学浪人は珍しい事ではありませんが、
日本に留学している外国人が
大学受験に失敗して浪人することは
在留資格の問題があって
不可能なこととされていました。
どこの学校にも在籍していない外国人に対して
留学ビザは許可されないからです。
ですが、ベトナム人の ミンさん(仮名)は
1浪したのち、 幸運にも
大学に合格することができました。
今回はミンさんを例に
外国人留学生が1浪できた状況について書きます。
・今、日本語学校で講師をしています。
・元、民間企業でOL経験あり。
・外国人の多い環境の中で、
文化や習慣のちがいを日々、体験しています。
・日本の社会の「あるある」と
日本以外の国の「スタンダード」を
比較してご紹介しています。
ベトナム人のミンさん(仮名)が来日したのは 2020年1月 です。
前年、高校を卒業してすぐ
日本語学校への入学手続きをして来日しました。
将来、日本の大学で勉強するためです。
ミンさんは日本語学校に入ると
大学で勉強するために必要な日本語の
スキルを身につけながら
大学受験の準備をしていました。
来日から9カ月後の2020年9月、
ミンさんは初めての大学入試に臨みます。
日本語学校の先生と相談しながら
志望理由書を仕上げて、
面接の練習をして
受験しましたが結果は不合格でした。
以後、2回、3回と受験を繰り返しましたが
ことごとく不合格のまま、
とうとう2021年3月になり
日本語学校を卒業するときが来ました。
外国人留学生が在学している学校
(日本語学校、専門学校、短大大学など)を
卒業すると間もなく
留学ビザの期限が切れます。
ミンさんも卒業後まもなく
留学ビザの有効期限を迎えます。
卒業する時点で
進学先や就職先が決まっている場合は
それぞれに対応する在留資格を申請して
ビザを更新することができます。
でも、ミンさんのように進学を希望しながら
合格できなかった場合、
残念ながらビザを更新することができません。
現状では「浪人」を理由に
留学ビザは認められていないからです。
つまりビザの期限までに
帰国しなければ
不法滞在
になってしまいます。
コロナ以前は
日本の大学に入ることを志して来日したものの
いろいろな事情でどこにも合格できず
帰国する学生が、毎年何人かいました。
しかし、2020年以降
世界中にコロナが蔓延したため
国をまたぐ移動が困難になり、
ビザの有効期限が近づいても
帰国手段のない
「帰国困難者」
が多数出たのです。
2021年3月に日本語学校を卒業したミンさんも
「帰国困難者」となりました。
大学入学が叶わず
ビザの期限内に帰国するために
ベトナム大使館に連絡をして
チャーター便の順番待ちをしましたが
順番はなかなか回ってきません。
このままで在留期限がきたら
(ビザが切れたら)
ミンさんは
不法滞在者
に なってしまいます。
このことに対処するため
日本語学校側は
帰国できない卒業生に対して
在留資格を
「留学」から「特定活動」に変えて
ビザの更新申請をするよう
アドバイスをするとともに
必要な書類を発行しました。
ミンさんも学校から言われた通りに
在留資格を 「特定活動」 変更して
ビザの更新をすることができました。
「特定活動」 ビザは最長1年、
日本に滞在することができます。
このビザがあると留学ビザと同じくらいの
アルバイトができます。
多くの卒業生が
アルバイトを続けながら
帰国できる日を待ちました。
ミンさんも生活費を稼ぐために
アルバイトを続けましたが、
ミンさんは他の卒業生と少し違って
帰国の準備ではなく
2021年秋の受験に向けて
勉強を再開したのです。
本来であれば、
日本語学校卒業後に
進学する学校が決まっていない場合、
留学ビザの更新はできず
留学生は帰国一択です。
しかしコロナが蔓延したことで
ミンさんは帰国が困難になり、
卒業後に特定活動ビザに切り替えて
日本にとどまりながら
勉強することができたため、
もう一度大学を受験するチャンスが訪れたのです。
卒業した年の夏、
ミンさんは日本語学校を尋ねてきました。
帰国出来ていないことは知っていましたが
大学入試の準備をしていたことには
学校の職員一同、驚きました。
職員にも
「浪人」
の概念が無かったからです。
「特定活動」ビザは最長で1年間更新できるので、
この制度を使ってミンさんは
アルバイトを続けながら
2シーズン目の受験を目指して勉強していました。
ここで合格すれば
「特定活動」ビザ が切れる前に大学生となり、
再び留学ビザを取得することができます。
日本語学校は
ミンさんの受験に必要な書類を発行しました。
ミンさんは書類の準備ができると、
1年前、先生と面接の練習をしたことを
思い出しながら復習して受験に臨みました。
去年、日本語学校の学生だった時には
学校や先生方のサポートを受けて
受験準備をしましたが、
卒業した今年はサポートが受けられず、
すべて自力でやらなければなりません。
ミンさんが努力を重ねた結果、
今度は合格することができました。
2年越しでの合格は
ミンさんにとっても良い結果でしたが
私たち職員にとっても
この上なく喜ばしいことです。
本当なら浪人は出来ないはずの留学生ですが、
コロナ渦で日本での滞在期間が
延長できたために
ミンさんには2年目の
受験のチャンスが巡ってきました。
時代の偶然もさることながら
この流れを逃さず、
逆風をチャンスに変えて
受験準備をしたミンさんは
素晴らしいと思います。
1. 帰国難民になって
2.留学ビザを特定活動に変えて、
3.その後、大学に合格したことで
4.特定活動ビザを再び留学ビザに変更して
5.更新することができます。
これが、今までできなかった
留学生の「浪人」が
今年はできた からくり です。
コロナ蔓延で
良くないこと続きだったこの2年間でしたが、
帰国困難で日本に残っていたために
幻の「留学生浪人」を果たし、
大学に合格したミンさんの快挙は
本当に嬉しいニュースです。
計画からは1年遅れとなりましたが
大学入学という来日目的を
果たすことができて、
2022年4月から
ミンさんの本当の意味での
留学生活が始まります。
外国人ばかりの日本語学校から
日本人の方が多い大学へ入学することで
ミンさんの日本語力は
これからもっと磨きがかかるでしょう。
ミンさんが大学を卒業する4年後までには
コロナが収束して
世界中どこでも行きたいところへ
自由に羽ばたけるようになることを
切に祈ります。
今回はコロナが招いた予想外の
「外国人留学生浪人」のお話でした。
以上です。